ライトワーカーとの遭遇

いつも通う近所のスーパーマーケットで、
レジにちょっと気になる店員さんがいました。
あ、男子ではないですよ…(笑)

失礼な言い方かもしれませんが、親しみをこめて言えば、
「レジで見かける普通のパートのおばさん」
そのもののイメージを絵に描いたような人でした。
お孫さんがいらっしゃるかも、くらいのご年齢に見え、
メガネをかけ、慎ましやかな微笑みを浮かべた
ごくごく目立たない感じの女性でした。

「袋を分けましょうね。ペットボトルって重たいですよね。」と、
優しい言葉をかけられて、ハッとしたのが最初でした。
マニュアル通りではない、とても心のこもった口調と声に、
夕方の疲れがすぅっと消えていくような気がしました。

それからその方がレジにいるのを見ると、
どんなに人がいても「あのおばさんのところに行こ。」と
並んでしまっていました。

特に人あたりが良いとか手際が良い、というのでもありません。
話しかけてこられることも少ないのですが、
ただ、1つ1つの作業に気を配り、物を丁寧に扱う手つきに、
人となりが感じられ、いつも何気なく見とれていました。

ものごとというのは、細部にフォーカスしていると、
だんだんリアリティがうすれていくのです。
カゴからカゴへ優しくそっと、品物が移されていく様子を
じっと見つめていると、スローモーションのように
そこだけが浮き上がるような、異次元的な様相に感じられました。
そのとき私はおそらく「いま・ここ」のポイントに
入っていたのでは
ないかと思います。

会計を済ませて場所を移り、買ったものを袋に入れながら、
「あの人なんだろう、とっても癒される人だ。」
「あんなふうに年を重ねられたら。」とか、
なんとなくぼんやり思うのですが、スーパーを出る頃には
たいてい忘れてしまっていました。
あたり前の日常というのは、永遠に続くと思うものです。

ある時から、その方を見かけなくなりました。
お名前も知らないし、どうされたのか尋ねるほどに
何があるというわけではありません。
でも、辞めちゃったのかな、と思うと、
急にさびしく残念な気持ちがしました。

その方の姿がないレジコーナーは、
心なしか照明が暗くなり、温度も下がったようにさえ
感じられました。
そういえば、いつもふんわりと光っていらした、
あの人こそ本物のライトワーカーだったのではないだろうか、
などと後になって思ったりしました。

それは私の勝手な想像ではあるのですが。
一生涯、ライトワーカーなんて言葉を知ることもなく、
スピリチュアルな世界に興味を持つこともなく、
でもただそこにいるだけで、人に力を取り戻させ、心を整わせる…。
本当に霊格の高い存在であれば、そんなふうな人生を
選ぶことがあるかもしれません。

もともとライトワーカーといっても選民的なもので
あるはずもなく、本来はみんな同じだと思うのです。
ですから、じつはあの人のおかげで気づきがあった、
と、自分から思うのであれば、
それはその人にとってライトワーカーだったと
考えても良いのではないでしょうか。

思い返せば、一度だけ私から話しかけたことがありました。
ハロウィンの時期に、店から指示されたのでしょう、
カボチャの帽子をかぶっておられたので、
「帽子、かわいいですね。」と言ったら、
ちょっと肩をすくめて、目を細めて笑っていらっしゃいました。
童話の中に出てくる “よい魔法使い” みたいな笑顔でした。

今もどこかで、同じ笑顔で人々をホッとさせ、
さりげなく魔法をかけているに違いありません。

私の妄想はさておき、あの素敵な方の人生が、
このあともずっと、お幸せなものであることを、
ひそかに願うばかりです。